第2029号2018年5月25日
健全な批判精神と旺盛な主体者意識…年寄りの思索

私は、昨年度クリエイティブ(第2005号 2017年5月25日)に、「教育の未来を語り、創る教育研究所」と題して拙稿を掲載しました。一昨年度は、クリエイティブ(第1981号 2016年5月25日)に、「教育研究所創立40年の歴史と未来」と題したものを掲載しました。過去を振り返り、学び、未来を語り、創ろうというのは、年寄りの常套句かなと反省することしきりです。

さて今年は…。

学校現場では、次期学習指導要領への対応が始まっています。小学校では、「特別の教科 道徳」が他に先んじて実施されています。文科省は、「考え、議論する道徳」という謳い文句でその充実を提唱しています。私見ではありますが、(静岡ではとうの昔からやっている)と多少の憤りをもっての感想をもちます。また、「主体的・対話的で深い学び」を推奨しています。これについても、先ほどと同様の感想をもちます。

次期学習指導要領は従来の学習指導要領に比べ、子どもたちが身に付けるべき資質・能力について十分すぎるほどの記載がされています。本来大綱的基準である学習指導要領の域を逸脱しているように思います。ある研究書によりますと、「次期学習指導要領が、何ができるようになるかに着目し、いわば能力主義的方向性を明確に打ち出した背景には、国の考える社会観があるのではないか。」と述べています。私は、資質・能力を前面に出した根拠には、新自由主義が根底にあるのではないかと思います。教育を国づくりのために…。聞こえはいいのですが、何か怖いものを感じます。

子どもたちの教育を担う私たちには、「健全な批判精神」が求められているように思います。健全な批判精神は、「旺盛な主体者意識」が土台にないといけません。社会の情勢や学校現場の実情を考えると、旺盛な主体者意識に基づく健全な批判精神をもった教職員が、今こそ求められているという思いに至ります。

静教組立教育研究所 所長 大石茂生