第2044号2019年1月10日
平成という時代をふりかえり思うこと

静岡県教職員組合
中央執行委員長
鈴木伸昭

新年あけましておめでとうございます。昨年は自然災害が多発し多くの方々が被災する年となりました。自然相手のことから避けられないこととは言え、胸が締め付けられる思いであり、今年は穏やかな年となることを願ってやみません。

さて、今年は皇位継承が行われ、平成の時代が幕を降ろします。2度の大戦があり激動の時代と言われた昭和から、天地内外ともに平和になることの意味が込められた平成へと切り替わって30年。ふりかえってみると、国内外での大きな出来事として、湾岸戦争(1991年)、9.11同時多発テロ(2001年)、リーマンショック(2008年)、東日本大震災(2011年)などが思い起こされ、平和や安定という言葉では収まらない時代であったように思います。

平成元年となった1989年は、ベルリンの壁が崩壊し、東西冷戦の終焉を告げる年でした。これを機に世界経済の潮流は資本主義へと向かい、現在の国境なきグローバル経済へと変容していきます。国内では、年末の日経平均株価が3万8千円を超える史上最高値をつけるなどバブル経済のピークにありましたが、その2年後にはバブルは崩壊し「失われた20年」と呼ばれる経済停滞期に転じました。国内外ともに社会経済の大きな転換期がこの頃であったことになります。

こうした変化に教育界も無関係ではなく、この年の学習指導要領改訂で「新しい学力観」が打ち出され、個性や学ぶ意欲を重視する方向への転換が提起されました。高度経済成長期には一流大学への進学が一流企業への就職に、そして個人の幸福につながるといった幻想が受験競争を過熱化させ、知識偏重の学力観に傾いたことを省みてのことでした。さらに次の改訂では、学校5日制への移行と21世紀の社会を見据えた「生きる力」の育成が打ち出され、総合学習や家庭・地域・学校の連携等を前にすすめようとしました。しかし、その矢先にマスコミ等による「ゆとり教育」批判が高まり、一転して学力観の振り子は逆に振れはじめ、今に至っています。教育界にとっての平成も大きく揺れ動いた時代であり、安定という言葉とは相容れない時代であったと言わざるを得ません。今年は平成に代わる新たな時代の幕が開く年となりますが、社会全体が同じ方向を向いて教育論を展開できる時代となることを願うとともに、私たち自身も社会への働きかけに一層努めていく必要性を感じています。

もうひとつ、1989年の出来事の中で忘れてならないこととして労働団体「連合」の結成があります。それまで運動路線の相違から別々に活動していた労働団体が、小異を越えて大同団結し、勤労者・生活者の目線に立った政治や社会づくりをめざした年でした。その後、提言型の運動を基本として働く者にとっての安心社会の形成に寄与し、今年で結成30周年を迎えます。私たちの身近においては、連合静岡が教育を社会全体で考える必要のある課題と位置づけ「豊かな教育環境の実現を求める教育署名」に静教組と連名でとりくんでくれています。そのおかげで毎年20〜25万筆余の署名を得ることができ、少人数学級の実現や配慮を要する子どもたちへの支援体制充実につながっています。私たちにはこうしたよき理解者がいることを忘れず、共に歩む姿勢を大切にしたいと思います。

本年も頑張ってまいります。よろしくお願いします。