第2041号2018年11月25日
県教研「特別の教科 道徳」特別分科会開催

学習指導要領の一部改訂によって道徳が教科化されたことで、小学校では今年度から、中学校では来年度から検定教科書を使用することになり、評価も導入されることになりました。そこで、様々な立場の参加者による協議を通して課題を明確にし、これからの道徳教育をどのように行っていけばよいか参加者と共有することを目的とし、県教研の1日目午後に、「特別の教科 道徳」について考える特別分科会を開催しました。

始めに静岡大学教育学部准教授 中村美智太郎さんが「新学習指導要領の道徳教育の方向性と評価の問題について」と題した基調講演を行いました。その後、シンポジストとして、中村美智太郎さん、掛川市教育委員会指導主事 藤田盛一郎さん、島田市立六合東小学校教諭 柴田千春さんを迎え、静教組中央執行副委員長の赤堀真人をコーディネーターとしてシンポジウムを行いました。

基調講話

【1】新学習指導要領のポイントと道徳教育の現在地
  • 改訂した学習指導要領の道徳教育のポイントを一言でまとめると、「道徳の大切さを教える」ことに力点を置く指導から、一人ひとりが感じる価値や大切にしたい価値がそれぞれ違うといった「道徳の多様性の理解」にシフトしていくこと。
  • 国は、これまでの道徳教育では読み物の登場人物の心情理解に偏った指導がされてきたという認識をもっており、前回の学習指導要領では「道徳的実践力」が重視された。しかし、今回の改訂では、実践に移す前の内面で起こっている様々な葛藤や友達との意見の違いを議論することこそが大事であるととらえ、「考え、議論する」ことが重要視されている。
  • 検定教科書しか使ってはいけないわけではない。現代的な教育課題に対して、子どもや学校の実情に合わせて教科書でカバーできない部分で様々な教材を使うことが必要となる。教科書を超える学びを可能にする授業や組織づくりが求められている。この機会に新しいことにチャレンジできるとよい。
【2】「考え、議論する道徳」授業における評価の問題
  • 評価のポイント
    1. 学習状況や道徳性にかかる「成長の様子」である
    2. 「成長の様子」を「指導」に活かす(指導と評価の一体化)
    3. 数値等による評価は行わない
    4. 評価は教育改善のためであり、調査書(内申書)での記載や入試での使用は行わない
    5. 個別の内容項目の評価はせず、「大くくりなまとまり」(A自分自身・B人との関わり・C集団や社会との関わり・D生命や自然、崇高なものとの関わり)を踏まえて行う
  • 子どもの成長やよさを前面に出して伸ばしたいところも含めて記述していくことが求められる。
  • 計画的に評価することが大切。そのために、ワークシートや発言を記録するメモ、道徳ノートなどを用意し、評価する資料を蓄積することが必要。学校全体で話し合い、方針としてまとめてあるとよい。

シンポジウム

シンポジウムでは、掛川市教委の藤田さんから掛川市の道徳教育のとりくみについて紹介があり、授業改善と評価のあり方に課題があることが提案されました。また、六合東小学校の柴田さんからは、文部科学省の研究指定校としてとりくんできたことやその成果について紹介があり、それを踏まえた上で授業づくりや評価の仕方等について悩みが出されました。その後、「授業づくり」と「評価」の二つの柱についてシンポジストで意見交換をしました。後半では、一般の参加者からも質問を受け、課題の解決について考えました。最後にシンポジスト一人一人が下記のキーワードを提示して協議をまとめました。今後も道徳教育について認識を共有しながらとりくんでいくことが大切であると確認しました。

「besser」中村さん

人間にベストはない。よりよくなることしかない。多忙な中で100%を求める必要はない。昨日より少しだけよくなればよいという感覚が大事だと思う。その中で少しずつでもチャレンジができればよい。

「涵養」藤田さん

無理をすることなく自然な流れで授業改善ができるとよいと思う。うまくできなくても自分の中で水がしみこむようにゆっくりゆっくり育っているような感覚で道徳や学校のことについてとりくめるとよい。

「連携」柴田さん

学校の教育活動全体で道徳教育をしていかなくてはいけないと思う。めざす子どもの姿を学校の職員全員が共通理解することが大事。そうすることによっていろいろなチャレンジができる。