第2039号2018年10月25日
国境を越えて、これからも交流を −オーストラリア教育組合ビクトリア支部との交流−

▲県教委表敬訪問

8月に静教組が訪問したオーストラリア教育組合(AEU)ビクトリア支部から、メレディス・ピース委員長を団長とするAEU組合員16人が来静しました。西部地区でのホームステイ、学校訪問、県教委表敬訪問、教育協議会等を行い、様々な形で交流を深めました。

=ホームステイで心と心の交流=

AEU組合員は9月27日(木)から9月30日(日)まで西部ブロックにてホームステイ(浜松7人、磐周5人、湖西2人)をしました。AEU組合員たちは、ウェルカムボードを掲げた大歓迎ムードの出迎えに感激し、笑顔でそれぞれのホームステイ先に向かいました。
9月28日(金)には各地で学校訪問をし、授業参観や子どもたちとの交流を行いました。授業に参加して子どもたちにオーストラリアの紹介をしたり、オーストラリアでは習慣のない給食や清掃を一緒に経験したりと、日本の学校の様子に触れ、充実した一日を過ごしました。

週末はホストファミリーと過ごしました。別れの場面では、最後の最後まで写真撮影をしたり、涙を流して抱き合ったりと別れを惜しむ姿が見られ、充実したホームステイの様子を垣間見ることができました。

=STUとAEUとの教育協議会=

10月1日(月)に静岡県教育会館にて開催された教育協議会では、AEU組合員、静教組本部及び各単組・支部役員、静教組立教育研究所、県PTA連絡協議会、県校長会から延べ55人が参加しました。

全体会では、静岡県とビクトリア州における教育の現状と課題について、静教組とAEUの双方から基調提案が行われました。その後、4つのグループに分かれ、基調提案や学校訪問で参観したり体験したりしたことをもとに、授業づくり、生徒指導、特別支援教育、研修、教職員の多忙な勤務など、国は違っても共通に抱える課題について協議しました。お互いの状況からよりよい教育・職場のあり方について考え、積極的な意見交換ができました。子どもたちの未来や教育に馳せる教職員の熱い想いは世界共通であるということを感じる機会でもありました。

オーストラリアの教育の実態

●AEU(オーストラリア教育組合)ビクトリア支部について

組合員は4万9千人。うち4万3千人が初等中等学校の教職員であり、校長も加入している。組合員は州全域の1500を超える様々な規模の学校に勤務している。

●ビクトリア州の教育の現状と課題

ビクトリア州は文化的多様性が極めて高く、住民の出身地は200か国以上、150以上の異なる言語が話されている。公立の初等中等学校ではその多様性が尊重されている。学校は、地域の人が集まるコミュニティの中心的存在であり、地域の人々が学校運営に深く関わっている。ビクトリア州、特にメルボルンでは人口増加が著しく、学校・学級数を増やすことが必要であるが、公立学校に十分な予算が与えられていないために、学習面や福祉面において課題が山積している。

また、全国統一の学力テストによる学校現場への圧力が高まっている。テストへのプレッシャーは子どもたちのストレスになり、教職員にとっても、テスト結果が教員評価に使われるなど不当な評価が大きな負荷となっている。さらに、テスト対策の授業はカリキュラムへの支障を来たし、学校、子どもたち、教職員に悪影響を及ぼしている。

教材研究や教員研修の時間が取れないといった教員の多忙、長時間労働も課題であり、AEUは教職員の勤務時間について教育省との交渉を重ねてきた。その中で、教員が授業以外のこと(授業研究、他校への授業参観など)に専念できる日を年4日間とることが認められた。

=歓迎レセプション=

教育協議会後は、歓迎レセプションを開催しました。レセプションには、教育協議会参加者に加え、県教委、教育事業団体の代表者、連合静岡 中西清文 会長、佐野愛子 県議会議員など多数の出席がありました。また、各テーブルの通訳を兼ねて組合員6人も出席しました。それぞれのテーブルでは、和やかな雰囲気の中、滞在時の思い出話や互いの文化について語り合う姿が見られました。AEUメンバーからは「ホームステイ、学校訪問での温かい歓迎に感激した。学校では自国との相違点が見られてとてもよかった。子どもたちがとても落ち着いて活動していた。AEUメンバーみんながそう感じているはず」「課題も多い中、子どもたちや教育に対して真剣にとりくんでいる教職員の熱意は両国とも同じだと感じた」「世界の国々が日本から学ぶことがたくさんあると思う」等の感想が述べられました。