第2016号2017年11月10日
委員長あいさつ『主体性的な学びの輪を広げていきましょう』

静岡県教職員組合
中央執行委員長
鈴木伸昭

静岡県教職員組合は本年6月をもって結成70周年を迎えました。県教研集会は第67次の数字が示すように、結成後3年を経て開催され始め、以来途切れることなく回を重ねてきています。私たちがすすめる教育研究活動は、憲法が掲げる民主的で平和な社会の形成に向け、「その理想の実現は教育の力にまつべき」とした当時の教育基本法の精神に基づき、自主的なとりくみとして始まったものです。結成当時の教育界は「学校教育の混乱は目を覆うばかりで(中略)精神的な支柱としての役割が教職員組合に期待されていた」と静教組50年史には記され、1947年3月に示された学習指導要領「試案」は、戦前の画一的な教育制度が教員から創意工夫を奪ってしまったことを指摘し、「今わが国の教育はこれまでと違った方向に向かって進んでいる。(中略)これまでとかく上の方から決めて与えられたことを、(中略)今度はむしろ下の方からみんなの力で、いろいろと、作り上げていくようになってきた」と述べています。教育の指針は示すものの、それは方向性を示唆するものであって、その具体を創意工夫の下で自ら創造していくということは、私たちがすすめる教育研究活動の趣旨と合致するものです。終戦直後の教育がめざそうとしていたものは、今に通じるものです。しかしその後、経済の発展や科学技術の高度化、社会の変容に伴う価値観の多様化、そして政治の動向等により、改訂のたびに学習指導要領は揺れ動き、細かな部分にまで踏み込むようになって、教育現場は理念と実践、理想と現実との間で対応に苦慮することになります。間近に迫った道徳の教科化を例に取れば、検定教科書を使うことにより、郷土色や地域性が失われ、ありきたりの価値観や規範意識を押し付けかねないという課題と向き合うことになります。これは道徳だけでなく教育活動全般にも言えることであり、子どもや地域の実態に応じた自主教材や補助教材、副読本などを効果的に活用すること、体験的な活動を取り入れることなど、前半で申しあげた教育の原点に立ち返る視点が大切であることを見失ってはなりません。

こうした中、静教組は「ゆたかな学びを求めて」と題した教育政策提言2017〜19年度版を発行しました。この提言は、教育のあり方を見つめ直す機会に、留意したいこと、条件整備として求めていくべきことを私たちなりに整理したものです。めざす学びのあり方につながる大切な要素として、「問い続ける自分」「主体性と協働」「多様性の尊重」の3つのキーワードを掲げています。抽象的な表現ではありますが、これらをそれぞれの教科・領域の教育活動に落とし込んでいく必要があるのではないかという提言です。議論の材料として活用いただくことをお願いします。

社会が日々変化を遂げている中、私たち教職員も変化を的確に捉え、従前のままの価値観や指導法に囚われることなく、力量を高める努力が必要とされる状況に置かれていることは事実です。教職員自身が主体的な学び手として自ら求めて学ぶとともに、その輪を広げていきましょう。