第1965号2015年9月25日
平和と民主主義を守るために 安保関連法案の強行採決及び成立に対する抗議声明

政府与党は、集団的自衛権の行使を認めることなどを盛り込んだ安全保障関連法案を参議院特別委員会及び本会議において強行採決し、成立させました。静教組は法案に対する反対の声が高まりを見せる中での強行採決に対し、抗議声明を全分会及びマスコミ等関係各所に発表しました。

安保関連法案の強行採決及び成立に対する抗議声明

政府与党は、衆議院に続き参議院特別委員会及び本会議において、安全保障関連法案を再び強行採決し、成立させた。衆議院での強行採決後、法案に対する反対の声は一層高まり、特に8月末から9月中旬には、14,000人が国会をとりまく連合主催の集会(8月23日)や若者による全国64カ所同時集会(8月23日)、市民団体による「10万人集会」(8月30日)、9月第1週、第2週に行われた連日の抗議行動など、大規模な集会が各地で開催された。憲法及び国の基本政策に関わる重要課題であることを踏まえれば、徹底した議論と国民の理解を求めるべきであるにも拘わらず、最終盤になっても国会答弁は迷走し、国民から「よく理解できない」「十分に審議されていない」といった多くの懸念の声があった。そうした中、特別委員会では与野党の合意なしに委員長の職権で審議を打ち切り、本会議でも野党からの担当大臣問責決議案や内閣不信任案が提出されるような状況において、2度目の強行採決に踏み切った。このように民意に耳を傾けることなく法の成立を図った政府与党の姿勢は民主主義の基本を踏み外していると言わざるを得ない。

戦後70年を迎えた今年、これまで憲法9条に基づき平和主義を貫いてきた日本が重大な岐路に立っている。戦争を経験していない世代が国民の大半を占めるようになり、時代の流れの中で平和の問題に対する危機意識は徐々に希薄化、多様化していたかのように見受けられる。しかし、今国会での審議がすすむにつれ、提案された法案の不備が明らかにされたことにより、従前から反対を訴え続ける声だけでなく、状況を見守っていた一般国民層からも反対もしくは慎重審議を訴える声が広がり急激に関心が高まってきた。若者による抗議行動の高まりや母親世代の女性層も抗議行動に参加する姿がその象徴的な表れである。元最高裁判事や多数の憲法学者は法案を明確に違憲であると主張している。直前の世論調査でも今国会での成立に反対する声は6割を超えていた。それらの切実な声があっても、「国民の理解が深まらなくても決める時は決める」といった傲った姿勢は民主主義および立憲主義を蔑ろにするものであり、厳しく批判されるべきである。

平和や戦争、紛争といったテーマは政治やイデオロギー的な問題として捉えられがちであるが、人の命に関わる問題、人や社会のあり方の問題という身近なものとして国民全体が重く受け止める必要がある。今この時においても、地球上のどこかでは戦争や内紛が起こり途絶えることがない。いずれも終わりなき報復の応酬が続き、その陰で一般市民、特に女性や子ども、高齢者が悲惨な生活を余儀なくされている。今回の安全保障関連法は、こうした争い事に加担することにつながるものであり、同時に私たち自身も争いの標的になりうる危うさを包含している。

政治的意図をもって国民を不在にし、極めて重要な法案を十分な審議を経ず、数の力で決着することは、安倍政権の傲慢な姿勢を如実に表しているものである。将来を担う子どもや若者に、平和な社会のあり方や真の国際貢献の姿を引き継ぐためにも、このような暴挙は許すべきではない。改めて国会の内外から、危うい安保関連法と安倍政権の政権運営に対して“NO”という意思表示を示し続ける必要がある。さらに、こうした批判の声を来年夏の参議院議員選挙において国民の意思として示していく必要性が高まっていることは言うまでもない。

静岡県教職員組合は、今回の安保関連法案の審議及び強行採決に関して、現在の政府与党の政治姿勢を強く批判するとともに、改めて民主主義と立憲主義の重要性を強く訴える。

2015年9月24日

静岡県教職員組合
執行委員長 鈴木伸昭