第1962号2015年8月10日
安全保障関連法案の撤回を

集団的自衛権の行使を認めること等を盛り込んだ安全保障関連法案は、7月16日の衆議院本会議で、自民党、公明党、次世代の党等の賛成多数で可決され、衆議院を通過しました。安全保障関連法案はこれまでの平和国家としての国のあり方を根底から覆すものであり、強行採決も民主主義を蔑ろにした暴挙であることから、静教組は「安保関連法案の強行採決に対する抗議声明」を全分会及びマスコミ等関係各所に発表しました。

安保関連法案の強行採決に対する抗議声明

政府与党は、衆議院特別委員会及び本会議において、野党が抗議・退席する中で安全保障関連法案を強引に採決した。憲法及び国の基本政策に関わる重要課題であり、マスコミ各社の法案に対する世論調査において、国民の約6割が今国会での法案成立について「反対」、約8割が法案の内容について「よくわからない」という数字が示されている中で強行採決に踏み切ることは、民主主義を蔑ろにした暴挙であり断固として認められないものである。

この議論は集団的自衛権に関する2014年7月の閣議決定に端を発した。自民党政権を含め歴代内閣が堅持してきた「集団的自衛権の行使は憲法9条が許容する自衛の範囲を超え許されない」という憲法解釈を、一内閣の恣意的な閣議決定で覆したことに起因している。その後、政府与党は世論の反発を避けるため、敢えて冷却期間を置いて2015統一自治体選挙後に法案を提出した。今回の安保関連法案は1本1本が極めて重要な法案であり、本来個別に十分な時間をかけて審議すべきところであるが、一括して期限内に審議し決着を図ろうとしていることにも大きな問題がある。

日本はこれまで武力に頼らない人道的支援を主として、世界の平和維持に貢献をしてきた。今回の安保関連法案が成立すれば、戦争や紛争のリスクのある海外で産業・経済や教育等の充実・発展に努めている日本人の安全が脅かされることになりかねない。現在、世界において人道的支援をもって貢献する日本の姿勢を転換せざるを得なくなる可能性がある。こうした事態は回避すべきであり、支援を受けている国々からも従来の姿勢の堅持を求められているに違いない。

過日の憲法審査会では、招致した3人の憲法学者全員が今回の安保関連法案を憲法の趣旨に反しているものと断じた。しかし、政府与党はそれらの意見に対する謙虚さが微塵も見られず、自らの主張の正当性に固執した。一方で、与党議員の一部からは言論を抑圧し、意にそぐわない意見は排除すべきとの強権的な発言が見られた。こうした背景を踏まえれば、法案の意図するところが真に平和維持のためであるとは到底受け止められない。また、これ以上審議を継続すれば国民からの反発がさらに高まると判断し、次年度の参議院議員選挙への影響を視野に入れ、強引に審議日程を区切って採決につなげようとした意図が透けて見える。首相自身が採決直前に「国民の理解がすすんでいる状況ではない」ことを認めていることからも、主権者である国民の合意を欠く行為であったことは明らかである。

こうした国民不在の政治的意図をもって、極めて重要な法案を十分な審議を踏まえず数の力で決着することは、現政権の傲慢な姿勢を如実に表しているものであり、強く批判されるべきものである。将来を担う子どもや若者に、平和な社会のあり方や真の国際貢献の姿を引き継ぐためにも、このような暴挙は許すべきではない。静岡県教職員組合は、今回の安保関連法案の強行採決に関して強く抗議の意を表するとともに、法案の撤回を強く求める。

2015年7月16日

静岡県教職員組合
執行委員長 鈴木伸昭

7月27日より、論戦の場は参議院に移りました。政府は、「徹底的に議論し、最終的に決めるべきは決める」とし、国会会期を9月27日まで延長することを決めています。法案が仮に参議院で議決されなくても、衆議院の3分の2以上の賛成で再議決できる「60日ルール」が9月中旬には適用できる状況です。

今後の国民世論の動向が、国会での審議にも大きな影響を与えます。国民世論を盛り上げることで、法案成立に歯止めをかけることができるよう、連帯できる組織とともにとりくみをすすめていきます。