第2109号2021年11月10日
第71次教育研究静岡県集会 中央執行委員長挨拶

静岡県教職員組合
中央執行委員長

赤池浩章

今から30年近く前の話になりますが、私が28歳のとき勤めていた小学校に翌年からティームティーチング(以下TT)が導入されることになりました。私と同世代の方なら覚えていると思いますが、TTは第6次定数改善計画の柱として導入されたものであり、活用の仕方については学校現場に委ねられました。

当時、私は6年生の担任であり、教務主任でも研修主任でもなかったのですが、校長にTTの導入方法について提案したところ、校長から「ぜひ、赤池先生がその役割を担ってほしい」と言われました。教職に就いて6年目の私にとって学級担任でなくなることの不安や自分自身がその担当になることを想定していなかった甘さを痛感しましたが、新たな指導法の確立に対する興味もあり、引き受けることにしました。

その指導体制とは、今では別に新しいものではありませんが、私は4年部付きの教員としてすべてのクラスの理科を1人で受けもち、算数の授業を学級担任と一緒にTTで行うものでした。また、遠足等の学校行事や運動会の練習も一緒に指導にあたりました。私が校長に提案した考えは「TTを専任化すべきではないこと」「子どもたちにとってもう一人の担任の先生にすること」でした。生活指導や保護者対応など、学級担任には実に多くの業務が求められ、ともすると1人で抱え込むことも多くなりがちですが、「もう一人」の存在は有意義であったと自負しています。

現在、中教審・文科省では小学校に教科担任制を導入する準備をすすめています。概算要求を見る限り、その内容は中学校のようにすべての教員が専科の授業を担当する教科担任制ではなく、算数・理科・英語等の専科教員の加配による指導体制の導入をめざすものとなっています。小学校にも数学・理科・英語等の免許を有する教員はいますが、専科指導の経験者は少ないため誰もが専科教員を担当する可能性があると考える必要があります。小学校における学級担任制のよさを生かしながら、教科担任制をどのように導入するかの検討が求められます。

一方、コロナ禍の中で、GIGAスクール構想が前倒しされ、指導体制や管理体制が不十分な状況にもかかわらず、「一人一台端末」の導入がすすめられています。国内外の社会状況からICTの活用は必須であり、コミュニケーションのツールとして用いることができるスキルを身に付けることは必要であると考えます。また、塾や予備校のように講師1人と複数の生徒との「1対多」の関係ならば、ICTの導入は容易にできるものと推察されます。しかし、小学校・中学校の教育は、学習集団における学び合いを大切にしており、対面授業が基本となっています。文科省も学校での感染を恐れて登校しない子どもを出席停止扱いとし、オンラインによる授業に参加した場合、特記事項に記載するが、出席扱いにはしないとする通知を出しています。文科省の見解、対応についてここで考えを述べることは控えますが、子どもの学びにとって何を大切にすべきか、そのために教育はどうあったらよいのかの議論が不足していると感じます。

私たちの教育研究活動とは、単に指導法について議論する場ではありません。子どもたちをとりまく現状をどう捉え、どのような思いで実践したのかを共有し、共通理解を図ったり、次への方向性を探ったりすることが教育研究活動であると考えます。したがって、教科担任制もGIGAスクール構想も教育施策ではありますが、そのこと自体が教育研究活動の素材ではなく、子どもの学びや成長にとってどうかという視点や、教育の方向性に対する議論を大切にしていただきたいと願います。

忙しい日々が続く中、立ち止まって実践を振り返ったり、仲間と侃々諤々の教育談義をしたりする時間が、学校現場には少なくなったと感じています。本日の研究集会が参加者の皆様にとって、そのきっかけになればと願っています。