
第1880号2012年3月10日
教育研究所「未来の教育を考える会」 第6回ミニシンポジウム開催
子どもたちがもっている力を子ども自身が引き出す…そのための大人の関わりとは?

2月18日(土)、静教組立教育研究所は「東日本大震災からわたしたちは何を学ぶか」をテーマに、志太地区の小中学校教職員と保護者35人による第6回ミニシンポジウムを志太教育会館(藤枝市)にて開催しました。
今回は、新潟県立大学人間生活学部子ども学科准教授の植木信一さんに、「震災後の子ども支援から見えてきた『普段』の回復」と題して基調講演をしていただきました。植木さんは、今回の震災で被災した福島県南相馬市の学童保育児童への支援を学生たちとともに継続しています。震災により『普段』を失ってしまった子どもたちへの支援をする中で見えてきた、子どもたちへの大人の関わりについて話をしていただきました。

▲植木信一さん
新潟に在住しながらの南相馬への支援は、それほど頻繁にできることではありません。そこで大切にされているのは「短時間でも密度の濃い時間を共有すること」なのだそうです。植木さんは、竹トンボ作りや竹笛作りなどをする中で、子どもたちと密度の濃い関わりをしています。そして、「また一緒に遊ぼうね」と次の約束をすることで、子どもたちは大きな心の支えを得ていくのだそうです。植木さんは「これは決して震災支援に特化したことではない」と語ります。普段何気なく、家で家族一緒に夕飯を食べる、休み時間に教室で子どもたちと語らう…こうした子どもと大人の密度の濃い時間の共有、安心してそこにいられるという居場所や環境をつくることは、子どもを見つめる親として、教職員として、地域に住む者として、もうすでにごく当たり前のようにやっていることかもしれません。そのごく当たり前の「普段」の大切さをもう一度考え直してみようという提案でした。
さらに、「子どもたちの発達が後退することはない。大人から見ると不可解な子どもたちの行動は、子どもたちにとっては本来もっている力を出せないで、もがいている状態なのかもしれない。まずは、子どもたちがもっている力を子ども自身が引き出す、そのための大人の関わりについて考えたい。子ども自身では問題の回復ができない場合は、意図的な大人の関わりが必要なのではないでしょうか。」と植木さんは語りました。
植木さんの基調講演を聞いた後に3つの分散会に分かれて議論をしましたが、どの分散会においても、今、目の前にいる子どもたちとどう自分が向き合っていたのかを振り返り、これからどう向き合うかを見つめ直す議論がなされました。
参加者の感想より
- 「普段の回復」とは震災に遭われた地域だけの問題ではなく、今、日本全体に求められている課題なのではないかと感じました。子どもたちが安心して身をおける場所が減り、人間関係が希薄化している今、大人が意識してそれらをつくっていく努力が必要なのだと思いました。「子どもが今、必要としている支援は何か」を見極めることが親や教職員に最も大切なことだということを忘れずに生活したいと思いました。
- 大切なのは短時間でも密度の濃い時間を共有すること。そして、そういう時間を継続すること。子どもが潜在的にもっている力を引き出していくために、周りの大人たちがどんな手助けができるのか、考え、実践していくこと…。植木さんの話は大変心に残りました。
