第1856号2011年3月10日
教育研究所「未来の教育を考える会」 第5回ミニシンポジウム開催

子どもたちの自己肯定感を高めるには 〜『めんどう』を乗り越えさせる経験の積み重ねこそ〜

2月19日(土)、教育研究所「未来の教育を考える会」と「調査部」共同開催で「子どもたちの人間関係づくり」をテーマに、第5回ミニシンポジウムを浜 松市教育会館にて開催しました。今回は、浜松を中心とした西部地区の小中学校教員と保護者35人でのシンポジウムとなりました。

第4回のシンポジウムに引き続き、本研究所調査部が行った「子どもたちの人間関係づくりに関する調査」から子どもたちの友人関係、自己肯定感について探りたいという趣旨で開催しました。

今回は、静岡大学人文学部社会学科の荻野達史准教授に調査部データを読み解いていただきました。

「子どもたちは人間関係に疲れ果てている」「お互い気を遣いすぎている」といった世間に流布されている子どものイメージは、必ずしも正確とは言えないという裏付けになる調査であるとの評価をされた上で、以下の3つの論点が提起されました。


▲荻野達史さん

1つめは、「子どもの友人関係への向き合い方」。男子に見られる友人関係への「無頓着さ」の傾向、女子に見られる友人関係への「過剰さ」の傾向に大人はどう向き合うべきか。

2つめは、「授業や生徒会活動への子どもの関わり方」。授業中の発言に対する積極性が中学生になると減少する要因として「めんどう」という思いの増加があるのではないか。このことをどう捉えるか。

3つめは、「子どもの自己肯定感の育み方」。中学生になると自己肯定感の低い子が増えてくる傾向とほめられる機会が減少することをどう捉え、今後大人はどう向き合うべきか。

これらの論点をもとに3つの分散会で、小学校教員と中学校教員、ベテラン教員と青年部教員、男性と女性、保護者と学識経験者などそれぞれの視点から議論しました。

子どもたちの自己肯定感を高めるためには「ほめることは大切だが、それだけではなく、めんどうなことにも乗り越えさせる経験を繰り返し与えていくことや、 何事にもすぐあきらめないで『自分もできるようになりたい』と挑戦や努力ができるような場を与えていくことが大切ではないか」という意見などが出されまし た。また、家庭でも学校でも、お互いを尊重し合う姿勢を大人が見せるべきだという意見も出され、参加者は大人がどうあったらいいかという課題をもち帰るこ とができました。

参加者の感想より

  • 様々な立場の人の考えを聞くことができ、勉強になりました。水準を保つことと主体性を求めること、ほめることとしかること、相手の立場を尊重すること等の バランスが大切なんだなと感じました。「めんどう」と感じることを乗り越えることで達成感や喜びを味わえるような子育てをしていきたいと思います。(教職員)
  • 子どもには明るく健やかに育ってほしいと願っています。イバラは除いてあげたいと思ってしまいますが、子どもに対してしてあげることはただひとつ、愛情を 込めて「ほめてあげること」。自尊感情、自己肯定感、いろいろな言葉で言われていますが、"自分のことが大好きで、自分が大切に思える"ように育てていき たいと感じました。(保護者)