世界を変える一歩
川根本町立中川根中学校 3年 榎田 華凛

 LGBT、以前と比べこの言葉を聞く機会が増え、知っている人も多くなったのではないか。しかし、LGBTをはじめとする性的マイノリティについて、きちんと理解をしている人はどのくらいいるのだろう。
 私がLGBT等の性的マイノリティについて知ったのは小学生の頃である。新聞を読んでいた時、漫画が描かれたページがふと目に止まった。それは、LGBT当事者の方が、実際の差別やいじめなどの体験を漫画で連載していたものだった。私はそれに興味がわき読むようになった。性的マイノリティに関して抵抗感や嫌悪感は無く、様々な人がいるのだな、なんで差別をするのだろうと思っていた。この頃から私は性的マイノリティに関心を持ち、いろいろな情報を集めるようになった。
 中学生になってから、英語の授業で衝撃的な出来事があった。英語の教科書に男の子二人が仲良く話している例文があり、それを読んだクラスメートの一人が、
「こいつらホモかよ、気持ち悪い。」
と言うと、教室の中では笑いが起き、それに
「キモいよね。」
と同意する子たちがいた。
 私はそのことに言葉を失った。それまでは、ホモという言葉は本や漫画の中でしか見たことがなく、実際に言っているのを聞いたのは初めてだった。いろいろな人間がいるのに、気持ち悪いと思うなんてショックだった。家で私は仕事から帰ってきた母にそのことを話した。
「確かにホモは酷いね。」
母はそう言った。母は続けて、
「でも、そう思う人がいるのは仕方のないことだよ。」
 と言ったが、私は母の発言が腑に落ちなかった。
 翌日私は、勇気を出して、気持ち悪いと言っていたクラスメートにホモが差別用語であること、それにより傷つく人がいることなどを伝えた。そのクラスメートはホモが差別用語であることやゲイという言葉を知らなかったそうである。
 そして他のクラスメートもLGBTという言葉を知らなかったり、言葉は見聞きしたことがあっても意味を知らなかったりする人がほとんどだった。私は性的マイノリティに関して、まだまだ理解されていないことを実感した。
 今年行われた東京オリンピックでも一つのテーマとなっていたように、これからは多様性を認める社会になっていく。だからこそ、これからの時代を担う私たち若者がマイノリティについて知る必要があると思う。
 私はクラスメートに性的マイノリティについて知ってもらおうと、LGBTについての発表をしたり、LGBT関連のニュースを話題に出したりした。クラスでは性的マイノリティについて知識を持つ人が増えたことで、差別的な発言は減った。また関心を持つ人も増えた。
 一方、性的少数者に対して嫌悪感を持つ人もいる。しかし、この認めないという考えも多様性の一つだと思う。私はあの時、クラスメートの考えを否定し、認めようとしなかった。私の言動は多様性を認めているとは言えなかったと反省した。なんでもかんでも受け入れることではなく、こんな考え方もあるのだ、こんな人もいるのだ、と理解することこそが本当の多様性を認めるではないのだろうか。
 母の「仕方のない」という言葉は様々な意見をもつ人がいることを私に伝えたかったのかもしれない。
 現代社会において十人に一人は性的少数者であるという調査結果が出ている。その中で肯定・否定等といった意見に関わらず多様性を認めることはとても重要だと思う。そして、認めるために、まずは知る必要がある。
 私自身、まだ知らない事が多くあり、無意識のうちに差別をしているかもしれない。だから、私は視野を広く持ち、様々な問題に関して多様な意見を知っていきたいと思う。ただ、知らない問題に対して一から知るというのは厳しいが、あの日、新聞を読まなかったら、私はLGBTに関心を持たなかったかもしれない。だからこそ、一人一人が知ろうとすること、そして気軽に知れる機会を設けることが多様性に富んだ社会を創る上で大切なことだと思う。
 多くの人が知ることで社会はよりよくなるはずである。情報がれているこの時代で、知ることはとても簡単だが、それが大切な第一歩である。だから私は世界中の人々に伝えたい。知ることで世界は変わっていくことを。

LGBTという単語はよく耳にするようになりましたが、だからといって世の中の人がみな意識しているとは限らない。だからこそ、まず多くの人が「知る」ことこそ第一歩である。そして、認めたくないという人の考えも多様性のひとつであると気づけた榎田さんはすばらしいと思いました。