『美しい海をいつまでも』
吉田町立吉田中学校 3年 粂田 陽菜

 「この目標をすべて達成できたらどんなに素敵だろう。」
 私が「SDGs」の取り組みに興味を持ったのは、体育館の壁に貼られていた「SDGs」のポスターを見てそう感じたからだ。「持続可能な開発目標」として、2030年までに達成するべき十七の目標と169の具体目標で構成されている「SDGs」。これは、世界共通の目標として近年注目されている取り組みである。
 ポスターに印刷されたカラフルな十七のパネルの中でも特に私の目に留まるものがあった。それは、鮮やかなコバルトブルーに染められた十四個目の目標、「海の豊かさを守ろう」というパネルだ。
 私の住む吉田町は、駿河湾に面した、農業・水産業共に盛んな町である。吉田の海で獲れる鰻やシラスは町の特産物として知られている。また、海と深く関わる吉田町では、町主催でビーチクリーン活動が定期的に行われている。しかし、こまめに清掃を行っていても、海岸には様々な「ゴミ」が漂着し、溜まっていく。
 昨年の春休みに、私は何度か海岸清掃を行った。吉田の海にはどれだけの「ゴミ」があり、またどのような類のものが多く流れ着いているのか、自分の目で確かめるためだ。私は、町が定期的に清掃活動を行っている海岸ではなく、そこから少し離れた家の近所の海岸で清掃を行った。一度目は、「少しゴミがあったとしてもそれほど多くは取れないだろう。」と思い、小さなビニール袋二枚だけを持って行った。
 しかし、いざ清掃を始めてみると、自分の想像をはるかに超えるゴミの量に驚いた。一枚でも十分足りると思っていたビニール袋は、あっという間にゴミでいっぱいになった。ゴミがはみ出してしまうほどに膨れ上がった袋を持って、私は自分の考えの甘さを指摘され、吉田の海の現実を突きつけられたような気がした。
 二度目の清掃は、一度目の反省を生かし、前回より少し大きめのビニール袋を二枚持って行った。一度目の清掃でかなりきれいになったと満足していた場所が、二日後には以前と同じか、またそれ以上に多くの新たなゴミが溜まってしまっていた。「あんなに頑張ってきれいにしたのに、たったの二日で元の状態に戻ってしまうなんて…。」とゴミの散らばった海岸を目の前に、私はあっけにとられてしまった。
 目の前の景色に戸惑いながらも、目的は「海岸をきれいにすることだ。」と気持ちを切り換え、プラスチックのゴミと可燃物のゴミとを分別しながら清掃を行った。一度目に持って行ったものより一回り大きい袋だったがこれもすぐにゴミでいっぱいになった。
 一度目も二度目もたくさんのゴミが集まったが、ゴミの種類は幅広く、一センチにも満たないプラスチックやガラスの破片から、外国産の菓子袋、DVDや大きな瓦まで様々な場所・国から集まった多種多様なゴミばかりであった。中でもプラスチック製品のゴミがとても多く見られた。
 海洋プラスチックゴミの増加は、国際的にも早急に手を打たなければならない問題とされている。海岸清掃を通して私は、そのような問題は決して他人事ではなく、身近に迫ってきていることなのだと強く感じた。
 今回の体験から、海洋汚染の深刻さを知り、吉田町のゴミ問題に対する取り組みについても調べてみた。
 リデュース、リユース、リサイクル、リフューズ、リペアの五つからなるゴミの発生抑制と資源の活用を進め、環境にやさしい循環型社会の実現につなげるために定められた「5R」。静岡県は本来定められている5Rに、リカバー(清掃活動に参加しよう)を加え、「6R」をキーワードにプラスチックゴミの減量を呼び掛けているそうだ。吉田町も県から定められた「6R」を中心としてクリーンな町づくりの実現に向けて活動を進めている。このような取り組みを世界全体で進めていくことができれば、海洋汚染問題の解決に向け、大きく前進していけるのではないだろうか。
 私は、吉田の海が大好きだ。小さなころから近くで慣れ親しんできたこの海岸が大好きだ。だからこそきれいであってほしいし、そのためには私自身も行動していかなければならないと思う。
 「海の豊かさを守る」ことは、モノや情報のあふれる現代において決して容易いことではない。しかし、小さなことからでも一人ひとりが日々意識して行動していくことができれば解決できない問題ではない。解決が不可能ではないからこそ私は、自分にできることを考え、また行動していきたい。
 美しい海を守るために…。

「海の豊かさを守る」ことは、粂田さんが語るように容易な事ではないのかもしれません。しかし、粂田さんのように行動できる人が増えることで、少しずつ解決できるのだと思います。粂田さんの力強い言葉の中に吉田の海岸だけではない、世界の海、海岸の問題が見えました。