介護問題を自分事として捉える
湖西市立鷲津中学校 3年 中村 文香

 日本人の平均寿命が延びる中、認知症のお年寄りの介護が問題になっています。老老介護から状況が進んだ認認介護により事件が起きています。認認介護とは、認知症の要介助者を認知症の介助者が介助していることです。認認介護で二人とも認知症だったため、体温調節が出来ず、熱中症で亡くなってしまうケースがありました。少子高齢化と核家族化が進む今、私たちはどうしたらいいのでしょうか。
 一方で、一人暮らしの認知症のお年寄りの場合、家族は「自宅で介護するか、施設に預けるか」というのも難しい問題だと思います。やはり、最後まで自分の家に居たいものだとは思っても、働きに出ていて介護をするのは難しい、こんな家が多いと思います。ただ一つ確実に言えることは、認知症の患者の介護にとって一番大切なことは、家族の協力です。自分には関係ない、と無関心でいるより、できるだけ認知症の家族と接している方が私たちも気分がいいと思いませんか。
 私の祖母は六年前に、私の祖父にあたる夫を亡くし、今は一人暮らしです。祖母は認知症の診断は受けていませんが、要介護となっています。祖父を亡くしてから心ここにあらずな時もありましたが、前より少しよくなった気がします。その頃、なるべく外に一緒に出かけたり、遊びに来てもらったり、家族で会う回数を増やすようにしました。やはり、家族も他人事とは思ってはいけないと感じました。新型コロナウイルスの影響や、祖母が疲れやすいこともあり、あまり祖母に会いに行けていません。私にできることとして、たまに手紙を出したり、電話をしたり、書道教室で書いた色紙やポストカードを贈ったりしています。会ったときは、笑顔で話したりなど、寂しさを紛らわせることができたらいいなと思います。一度、危険に思ったことがありました。父と私が祖母の家の冷蔵庫を覗いた時に、賞味期限切れの食品がたくさんありました。その日の夜出てきた鶏肉は、一年前に賞味期限が来ていて、冷凍にしていたものでした。その時、一人暮らしの家ではこういうことがあるんだと知り、怖いと感じました。そのことがあってから、父と叔母は定期的に冷蔵庫の中の食品をチェックしているそうです。介護をしていく上で小さなことでも気にかけることが大事だと感じました。
 このように、自宅で介護していくにはいろいろな問題点があります。でも、自分の家族を施設に預けるのには勇気と大きな決断が必要です。なかには、施設で生きがいを見つけられる人もいます。デイサービスでは、普段家に閉じこもりがちなお年寄りにとって、職員や利用者と話すことで刺激になる人もいます。例えば、歌や絵手紙、陶芸、園芸、書道など自分の趣味に取り組むこともできます。私の祖母もデイサービスに週に何回か通っていますが、手先が器用なので塗り絵をやったりして楽しんでいるそうです。老人ホームでは、家と同じような生活をするようにしているそうです。なかには、少ない人数で家庭的な雰囲気の中で過ごせるところもあります。このような施設は子供や頼る人がいないお年寄りに向いていると思います。お年寄りが過ごす施設では、認知症の症状の進行を遅らせるため、その人ができることを生かすことを大事にしています。
 今では、施設に預けることの他に、ケアマネージャーが仲介する「在宅介護」というものがあります。介護者がケアマネージャーに相談し、公的な介護保険サービスを利用できる、というものです。ケアマネージャーがいることで、介護者も休息を取ることができます。休息を取れるので、介護する家族も心に余裕を持って介護することができます。つまり、介護をする上で、介護者が全て一人で抱え込まないことが大切なのです。特に、認認介護の場合では近所の人と関わりを持つことで介護による事件を減らせると思います。
 杉並区では、六十歳以上の人たちが保育園や小学校の子供たちに絵本の読み聞かせのボランティア活動を行っています。こうやって、歳をとってから生きがいを見つけるのも素敵だと感じました。
 介護による問題はかなり身近にあると思います。それは家族だったり、自分もいつかそうなったりするかもしれない、ということです。そのために今の私たちができることは積極的にお年寄りと関わることが一番大事だと思います。今、私たちがお年寄りのために何ができるか、それを考えることが未来に繋がっていくのかもしれません。

少子高齢化、核家族化、介護という、日本社会の直面する問題を身近なものとして捉え、自分に何ができるかを考えることができました。医療・介護の問題は、社会全体で取り組まなければならない課題です。この課題への向き合い方を読者に訴えかける、すばらしい作品です。