第1934号2014年6月10日
押し寄せる危うい波に批判と反論を 第101回静教組定期大会

5月22日(木)、第101回静教組定期大会が静岡市・労政会館で開催され、2014年度の運動方針・予算などが承認されました。大会には、来賓として連合静岡事務局長中西清文さん、県P連会長澤西一良さん、県議会議員佐野愛子さんなど34人の方をお迎えし、各支部からは代議員245人(内女性83人、女性参画率33.8%)が出席しました。2014年度運動方針の質疑・討論では、数多くの質問、意見が出され、熱い議論が交わされました。大会の最後に、「子どもたちのゆたかな学び」「職務・職責に見合う賃金」「自主福祉運動」「組織一体となった運動」などの内容を盛り込んだ大会宣言が採択されました。

委員長あいさつ(要旨)

5月15日、安倍首相は集団的自衛権行使を前提とした検討をすすめる考えを表明した。憲法が定める平和主義を、正式な手続きを経ることなく解釈でもって変更をしようとすることに対し、強い危機感をもたなければならない。このことは自分から遠い所で起こっている問題ではなく、教育の最前線にいる私たちにもひたひたと押し寄せてくる危うい波であることに気付くかなければならない。「教え子を再び戦場に送るな」のスローガンを再び高く掲げなければならないことを皆さんと共有しておきたい。

県内では学力学習状況調査の結果に端を発した諸課題が続いている。社会が物質的な豊かさに慣れ、多様な価値観を受け容れようとしたとき、教育もまた相応の幅広さをもたなければ対応できない。教育を測る物差しは多様であるべきであり、特定の物差しのみをもって良し悪しを測るようになれば、そこに必ず歪みが生じる。それ故、学力学習状況調査の数値に偏った結果公表に関しては慎重であるべきだ。

「荒れる中学校」が社会問題化した背景を思い起こす。学力という一面的な物差しでは評価されない子どもたちは、反論の手段として問題行動を起こすことで自らの存在感を示そうとした。自らを認めてもらえない子どもたちの苦悩の表れを当時経験した教職員は知っている。そのため、こぼれ落ちそうな子にもしっかりと目を向け、気持ちを受けとめようと日常生活に寄り添い、行事や学級活動・部活動等を通じて、その子がもつ良さを見出し認めることで、それこそ教育の「再生」につなげてきた。ただ、そうした努力があっても教育の場において「荒れ地」が無くなることはなく、その「荒れ地」をいかに少なくするかという際限のない営みが教育であると先輩教員から教えられた。数値の相対比較による手法をもって学力を競い合えば、そこから押し出される「何か」によって「荒れ地」を広げることになりかねない。こうした経験に基づく懸念は抽象的ではあるが、決して無視できないものである。学力学習状況調査に限らず、現在すすみつつある政治主導の教育改革に対しては、そこから生じる負の側面への配慮を見失うことのないよう、教育論に基づいて健全な批判と反論に努めていく。

労働運動課題として、教職員の職務と職責に応じた処遇確保と働く者が大切にされる社会づくりに努める。人事院の段階で「給与制度の総合的見直し」が検討され、再び賃金抑制の動きは見られるが、教育に寄せる期待に対し職責を果たすべく日常の教育活動に真剣にとりくんでいる自負をもって、相応の処遇確保に向けた声を上げていく。また、若者たちや子どもたちにとって、額に汗して働く者が安心して暮らせる社会づくりのため、連合静岡に結集し、政府による労働者保護ルールの改悪阻止等の運動に積極的な参画をする。

公的な社会保障・社会福祉がやせ細ってきている状況において、自主福祉運動の推進に重点を置き、私たち自身の職場を、生活を、健康を守るために、連帯と協同の精神で築いてきた「共助」のシステムの良さを再確認し、積極的な活用を促していく。私たちの身の回りには優れた「共助」のシステムがあるが、必ずしも十分に周知され活用されているとは言えない。情報発信に努め、積極的な活用を促すとともに、皆が少しずつ相応の負担をし労力を提供することで成り立つ「共助」の理念を掘り起こしていく。

2017年度を目途とした政令市への給与移管に伴う組織運営課題にとりくむ。静教組は結成以来、必要感をもって県単一体運営を指向し、運動のあり方は政治的イデオロギーやメリット論に依拠せず、教育論に基づくものとしてきた。静教組が長い時間をかけて醸成してきた一体感は損ねてはならない。子どもたちの教育水準の格差を生じさせないことのためにも、運動体としての静岡県教職員組合はこれからも一体であることが、交渉力・提言力の上で必要不可欠であることを基本方針として組織運営課題にとりくんでいく。