第2068号2020年1月10日
過去から見た今 未来から見る今

静岡県教職員組合
執行委員長
鈴木伸昭

新年あけましておめでとうございます。

昨年は日本で初めてラグビーW杯が開催され、日本代表チームの躍進が大会を盛り上げ、流行語大賞となった「ONE TEAM」は、違いを認め合い多様性をむしろ力にして同じ目標に向かう素晴らしさを私たちに教えてくれました。さらにはアパルトヘイト(人種隔離)政策の影響が今も残る南アフリカが優勝した中で、黒人初の主将がトロフィーを掲げる姿は差別のない社会への前進を示すものでもありました。一方、年の瀬にはアフガニスタンで医療・農業支援に尽力されていたペシャワール会の中村哲さんが襲撃され命を落とされたとの悲報が入りました。同じ地でやはり凶弾に倒れた本県掛川市出身の伊藤和也さんの師でもあり、武力によらない国際貢献のあり方を体現されていた方でした。悲喜対照的な出来事ではありますが、人種や国境を越え目的達成に向け力を尽くした姿に感銘を受けるとともに、そこには多様性、人権、平和、共生といった問題を孕んだ「今」と向き合い、よりよい「未来」を創ろうとする姿を見出すことができ、記憶にとどめておく必要性を感じるものでありました。

世の中の変革は様々な要因によって成されますが、切実な思いに端を発した地道なとりくみを経て実現してきたものが少なくありません。「今」を見回すと、男女共同参画やマイノリティ(少数派)とされてきた方々の生き方に理解がすすんできたこと、各種のハラスメントに対する意識が高まってきたことなどが、そうした例として挙げられます。違和感を覚えても「そういうものだ」とされ言い出せなかったことを、小さくても声をあげ賛同を集めることによって、変革を促すことができることを私たちに示してくれています。今、16歳の環境活動家がたった一人で抗議活動を起こし、多くの共感を呼び、世界から注目されています。「未来」から見た時、「今」に挑む彼女の姿はどのように映るのか、興味深いところです。「過去」から見た「今」の世の中は着実に変わってきています。しかし、それでもなお「未来」から見る「今」はまだまだ不自然なこと不条理なことが幾つもあるように思います。次の世代の「未来」のために何ができるか、大それたことでなくとも案外できることがあるのではないかと思うのです。組合活動に参画することは、その一つだと私は考えています。未来を創る運動に共にとりくんでいきましょう。本年もよろしくお願いします。