第2050号2019年4月10日
人と人とが支えあう社会・職場づくりに向けて

静岡県教職員組合
中央執行委員長

鈴木伸昭

「君たちいいですか〜。人という字はねぇ、ひとりの人がもうひとりの人を支えている字です。つまり、人と人が支え合ってるから人なんです。人は人によって支えられ、人の間で人間として磨かれていくんです。」

かつて、学園ドラマの中で長髪の中学校教員がこう説明するのを聞いて、なるほどと私は頷いていました。実のところ「人」という字の本来の成り立ちは異なるようですが、この解釈を素直に受け止めることも悪いことではない気がしています。

先日、スーパーボランティアの尾畠春夫さんが静岡県内に歩いて入られ話題になりました。ストイックに社会のため人のために役立とうという生き方が多くの人の共感を呼びました。程度の差はあれ、人は誰も心の奥底では何かで役立ちたいという気持ちがあるそうです。しかし、思っていても容易にはできないことを尾畠さんが見事に体現していることに、私たちは惹きつけられたのではないでしょうか。ただ、尾畠さんを単にヒーローとして祭り上げるだけでは、ご本人に申し訳ありません。身近な所でも支え合いの輪を広げることに私たちも努めたいものです。誰かに何かで支えてもらっていること、逆に誰かを何かで支えていることを実感すると、心は落ち着きます。そうしたことが積み上がった社会は人に対して優しい社会になるはずです。

私たちのすすめる組合活動は、そうした支え合いの輪を広げることにつながる活動だと思っています。職場のあり方に目を向け、個別に悩んでいることや職場全体で抱えている課題を仲間どうしで分かち合い解決に向けること、職場だけで改善できないことは地域で協力して解決に向けること、社会全体でとりくまなければならない事は然るべき道筋を通して解決に向けることで、よりよい社会や職場を作る活動です。そのためには組織が必要であり、組織を束ねる役割の人が必要となります。また、社会全体を動かしていくためには政治の場へと代表を送り出さなければなりません。そして、そのような活動は、人づくりにもつながっていくものと私は思っています。

人という字は、二本の足で大地をしっかりと踏みしめ立つ姿にも見えます。これもまた、本来の成り立ちとは異なりますが、しっかりと自立した人を意味するとしても良い感じがします。人と人とが支えあう社会・職場づくり、自立した人づくり、いずれも組合活動からつながるものです。そうした意義をしっかりと心に留めて、今年度も頑張ります。よろしくお願いします。