第1996号2017年1月10日
執行委員長挨拶 店員さん 笑顔にしたら私の勝ち

静岡県教職員組合
執行委員長
 鈴木伸昭

新年明けましておめでとうございます。

新たな年を迎えると、身の回りの物事がリセットされた感覚になり、新鮮な気持ちで事に当たれそうな気がします。こうした節目を上手に活用して、仕事や生活の充実につなげるよう前向きな姿勢に努めていきたいと私は常々思っています。

さて、私が今年心掛けたいと思っていることを紹介いたします。昨年、印象に残った新聞投稿から学んだことです。次のような、ある女子高校生の投稿でした。

最近のマイブームは「お店の人を笑顔にすること」だ。ルールは単純で、お店の人とニコッと笑い合えたら私の勝ち。なぜそんなことを始めたかというと、人と人とのつながりが希薄になっているのではないかと感じたからだ。ある飲食店で店員さんに必要以上に横柄な態度で接する男性客を見かけた。店員さんに対して偉そうになってしまうのはなぜだろうと思った。店員さんがサービスをしてくれるのなら、客の私たちも笑顔でそれに応えるべきだ。店員さんと客が人として対等な関係をめざしていくことが、人と人との距離を埋める第一歩になるだろう。私はそう思った。

(2016年1月29日朝日新聞朝刊より 一部省略)

サービスを提供する側と享受する側の関係は、人としての上下関係ではないことは言うまでもありません。しかしそのことを錯覚していると思われる場面を見かけることも時々あります。ユニークな発想ながら大切なことだと感心して、スクラップしておきました。その後何か月かして、空港の待合にある寿司屋で、この投稿文を思い出させる場面に偶然遭遇しました。高圧的な40歳代の男性客と注文の仕方を聞きながら笑みを見せる20歳代の女性客、その二人に対応する寿司店員、店員の心中を推察しながら観察してしまいました。高圧的な男性客に対しては固い表情ながら誠実な対応に努めていました。謙虚な女性客に対しては、想像通り柔らかな態度で説明していました。当然ながら表情は穏やかです。店員にすれば、どちらも大切な客であることに変わりはなく、それぞれ職人として丁寧に接することに徹している姿に妙に感心してしまいました。きっと「どちらのお客さんが良い?」と仮に店員に聞いても「どちらも大切なお客様」と答えることでしょう。しかし、その時気づいたのは、一緒に食事をしていた私の気持ちです。傍らで一緒に食事をしていて、一緒に美味しく食事を楽しむことができる客はどちらかと問われれば、その答えは言うまでもありません。投稿した女子高生の姿勢は向き合う店員との関係のあり方を述べたものでしたが、実は周囲にいる人への気配りにもつながることに、実際の場で私は気づきました。

これを教育の様々な場面に当てはめるとどうなるのだろうと考えてしまいました。「店員さん 笑顔にしたら私の勝ち」の「店員さん」を子どもたち、担任の先生、保護者の方、校長先生といろいろに置き換えてみてください。皆が心掛けると素晴らしい教育ができるような気がします。